――セント=ヴァレンチヌス――

城壁の一角、
椿の樹の下で、咲いている花と、落ちた花とを見比べていた男の所へ
紙包みを抱えた娘が駆けて来る

「ウェイブ様、はい!」
「アルか、何だ・・?」
「バレンタインデーですよ、今日は」
「ああ、そうか・・」

受け取ろうとして、ふと手を止め、何を思ったか吶々と語り始める

「・・所で、この行事の根源には、セント=ヴァレンタインという男が存在する訳だが」
「はぁ・・?」
「彼は、棍棒で撲殺されたのだ、そうだ」
「ええっ!な、何でですか!?」
「時の皇帝が、ある宗派が気に入らんが為に、結婚を禁じた。
 ヴァレンタインは、そんな神に祝福されて結婚出来ない者達の為に、仲を取り持ってやったのだ」
「うぅ、とっても良い人じゃないですか」
「だが、彼の行いは皇帝にばれてしまった」
「そんな!」
「皇帝は彼に改宗を命じた。だが、彼は頑なにそれを拒んだ・・結果、彼は大衆の前で撲殺されたのだ」
「そうだったんですか・・」

そんな出来事が根源に有るのに、酔狂な行事だとは思わないか
そう言って見下ろすと、娘が涙目で見上げている

「・・ウェイブ様はバレンタイン、嫌いですか?・・チョコは、嫌いなんですか?」

それは、聞かれるまでも無いだろう

「いや、貰える物は、皆有り難く貰い受けるぞ・・それが喰える物なら尚更だ」

手を差し出すと、娘の顔が見る間に笑顔に成る

「はい、どうぞ」

啄ばみながら、脇で嬉しそうに寄り添っている娘に語り掛ける

「無理に好意的解釈をすれば、ヴァレンタインは・・可程に思い伝える事は重要だ、とそう云いたかったのかもな」
「はいっ、きっとそうですよ!」




------end


遅くなってすみません(平謝
まめさんからもらったバレンタイン小噺ウェアル編ー!
いやもうアルの可愛さとウェイブさんの薀蓄なところがよさげです。
ウェイブさんて、知識量が豊富すぎるが故に色々細かい所まで話してくれそうですよね。
誰も知らないような小ネタを話してくれそうで。
そしてそれを楽しげに聞くアル。いいなぁ。
今回は少し哀しいネタでしたが、最後にはちゃんとチョコもらってフォローも入れてるところがいいです。
やはりアルは笑ってくれている方が良いのですね…うふふ。
まめさん、ありがとうでしたー!


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