これからもずっと。 ただ、あなただけを想う。 それは人魚の恋の物語。 アーマリンは優しい娘だった。 優しくて穏かで、気立てのよい、そして一途な娘だった。 そう、人間に恋し、己の命を縮めてしまうのもかまわずに、陸に上がり、人として生きる事を決めてしまうほどに。 「本当に行くのかい?」 そう問いてきたのは母親だった。 アーマリンは一瞬困った顔をし、それでも口元に笑みを浮かべて深く頷く。 「お前は昔から真っ直ぐな子だったからねぇ」 もう何を言っても無駄だという事をその表情で悟ったか、母親は苦笑する。 彼女はある日、人間に恋をした。 母親は娘の恋路に口を挟むつもりは無かったが、よりによって選んだ相手が人間。 他種族を害し、大地だけでなく海をも汚すあの『人間』だ。 当然、母親だけでなくそれを知った周りは反対する。 けれども彼女は決してその気持ちをかえたりはしなかった。 「ごめんなさい。母さん」 一言そう呟いて、アーマリンは母親の体を抱きしめた。 周りの反対も説得も振り切って、彼女は陸へ上がる。 海に戻らず陸のみで暮らすのは確実に彼女の命を削ることになる。それが分かっていながらも、彼女は陸へ上がるのだ。 ただ一人の愛しい男のために。 彼女の選んだ男は、誰よりも海を愛した男だった。 その眼差しと志。側にいたいと希うほどに想った。 彼女は男に想いを打ち明け、男はそれを受けいれた。 「後悔なんかしないように生きなさい」 母は彼女の髪をゆっくりとなでながら言葉を紡ぐ。 「うん」 頷く彼女の笑みは、何よりも幸せに満ちていた。 「シオン様」 「何だ?」 「私は、シオン様の側にいられて幸せです」 一点の曇りもない、その一途な想いを言葉にすると、男は面を食らったように僅かに目を見開いた。 それから、小さく落とすように笑う。 「………そうか」 「はい」 「………ならば俺は海に感謝すべきか。お前と出会えた事を。………お前と共にいられることを」 そう言って、男は彼女を優しく抱きしめた。 スペクトラルフォースシリーズ World:ハネーシャ艦隊軍 お題配布: セリフから連想30題 |