宵闇の宴 |
「死にたい奴はかかってきな!!」 轟、と剣刃がなる。 「いくぜぇ!!壱之太刀・辻風!!!」 金と黒の髪を高く結い上げた金の瞳の侍。 嬉々として刀を振るい、見る間に敵をなぎ倒して行く。 その太刀筋を見切れる者はなく、ただ地にひれ伏し倒れこむのみ。 飛竜の名に相応しく、侍は戦いつづける。 時は魔導世紀995年。 まだ、ネバーランド大戦勃発前の時。 ムロマチ軍現君主、大蛇丸は戦いを求めていた。 戦って戦って。戦いつづけてもあくる事のない渇望。それは何か。 強い者と戦う事。刀を交える事。それは何と昂ぶらされる行為か。 相手と戦って殺す事には喜びなど感じない。 ただ、戦う事にのみ高揚感を覚える。生死のやり取りの、そのむこう側。それが己の最も望むもの。 「大蛇丸様!お戻りを!!これ以上突出しては敵軍の中に孤立してしまいますぞ!!」 大蛇丸のお目付け役を担う隻眼の男、蓮撃が慌てたように声を張り上げる。見れば、確かに味方の兵は周りに少なく、ここは敵軍領土だ。しかし。 「心配すんな蓮撃!まだいけるぜぇ?」 けろりとして大蛇丸は豪快に笑い飛ばす。それに蓮撃はいつもの頭痛に見まわれて、危うく落馬しかける。 「駄目です!!お戻りください!!戦況は我が軍が不利なのです、たて直さねばなら・・・」 そこまで言ったとき、後ろから魔族の兵が突如切りかかってきた。はっとなって振り返った時はすでに遅く、その切っ先が蓮撃を捕らえていた。 「ぐああっ!!」 だが、上がった悲鳴は蓮撃のものではなく。 「へへっ」 いつの間にか回り込んでいた大蛇丸が、自身の愛刀「昇陽」でその魔族を袈裟懸けに切り裂いていた。魔族の兵は断末魔の叫びをあげながら落馬し、土煙の中に消えて行く。 「気ぃ抜いてんじゃねぇぜ?蓮撃。いつ誰が狙ってくんのかわかりゃしねぇからなぁ」 「・・・・誰のせいですか、誰の!!!!」 にやりと不敵な笑みを浮かべる大蛇丸に蓮撃はぶちんと切れて怒鳴りつける。 あまりに自分勝手に動き回る大蛇丸。それのお目付け役ともなれば、自分の事などにかまっている暇がない。だが相手がまったく悪びれもしないし、態度改善もしないので、蓮撃は頭痛のほかにも胃痛を抱えている。 「・・・それよりも!早く戻りませんと!新山と不如帰だけでは持ちこたえられぬ状態なのです!」 「あぁ?大丈夫だって、蓮撃」 切羽詰ったようにいっても大蛇丸は相変わらずあっけらかんと言い放つ。 「何故そのように言えるのですかっ!!」 「だってよ、もうそろそろだぜ」 「は?」 大蛇丸が不敵に笑ったまま、むこう側を見る。つられて蓮撃もそちらに視線を向けた。 「時間どおり。さすがだな」 「・・・・あれは!」 見れば向こうにはおびただしいほどの数の影。土煙を舞い上げやってくるのは。 「・・・・義軍イプシロイア!」 君主ラーデゥイが率いる勇者軍。ムロマチの同盟国として援軍に来たのだ。 「さて、行くぜ蓮撃!このままたたんじまおうぜ!!」 そう言って大蛇丸は馬を駆り、再び戦場の渦の中へと躍り込む。 「せやぁっ!!」 斬!と鮮やかに斬り伏せて、大蛇丸はそのまま次に切りかかってきた兵士にその刃を向ける。 その戦う姿はさながら獣のようだ。しかし、荒れ狂うものではなく、自然に磨かれた凛とした猛々しさを纏う。 「もっと強ぇ奴はいねぇのかよ!!」 そう叫んだ時、後ろから殺気を感じる。 「死ねぇ!!」 怒号があがり、剣が大蛇丸へと振り下ろされる。次の瞬間、 「ぐあぁっ!」 大蛇丸が振り返り、相手を切り倒す前よりもはやく、その兵士が叫びをあげて崩れ落ちた。 「油断大敵だな」 倒れこんだ兵士の後ろから年若い青年の声が聞こえる。その声の主を見て、大蛇丸は破顔する。 太陽が昇る前の、薄い紫色の空と同じ色の髪と瞳。身の丈は大蛇丸の顎あたりで、細身ではあるがきちんと筋肉のついた整った体格をしている。青年、と呼ぶにはもしかしたらまだ少々幼いかもしれない。そうしてその手には先だって、五勇者の一人であるグレイから受け取った魔を滅する剣「天魔剣」。 「シフォン!」 大蛇丸は戦友の名を呼ぶ。 「久しぶりだな、大蛇丸」 「おお、本当にだ!久しいぜ!」 「ああ、だが積もる話はあとにしよう。今はこの状況を打破しないとな!!」 嬉しそうに話しかける相手にシフォンも笑い、だが、立て続けに襲いかかってくる敵兵に気を抜くことなくすばやく構える。 「おぉ!そうだな!」 シフォンに背後をまかせ、大蛇丸も構える。 「いくぜ!」 「ああ!」 日が落ちかける頃。 その時の戦場はムロマチ軍と義軍イプシロイアの勝利で終わったが、まだ敵軍の本陣は姿を見せてはいない。敵軍が引き上げたのと、夜がくるのを頃合に、両軍はここで野営をする事にした。 「俺が最初、前線に出て敵陣を引っ張り出す。お前達は今度はこのルートをたどり、敵軍の背後に回り、奇襲をかけるんだ。そのあとは待機していたムロマチ軍と挟みうちにして、一気に殲滅する。わかったな?」 先程大蛇丸と話して決めた事を一同に話すラーデゥイ。 「はい、わかりました」 「よし、まぁ、今日はとりあえず明日のために体を休めておけ」 シフォン達の返事を聞いて、それからラーデゥイは戦略を話していたときと打って変わり、気さくに笑ってシフォンの肩を叩いた。 「はい!」 去っていくラーデゥイの背中を見送って、シフォンは一度のびをする。 「さて、とりあえずは腹ごしらえだな」 同僚のクリスがむこう側を指差して声をかける。 「うん、明日のためにも体力付けとかないとな」 「そういってあんまり食べ過ぎないようにね、シフォン」 クリスの言葉に同意して言うシフォンにランジェがくすくす笑って注意する。 ランジェを含めたこの三人を周りは三勇者と称賛する。 「おう、シフォン!いたいたぁ!」 と、後ろのほうから声をかけられて三人は振り返る。見れば酒の入った徳利を背にかついだ金と黒の髪のムロマチ君主。 「大蛇丸」 「これから飯か?何ならついでに一杯やんねぇか?積もる話もあるしよ!」 そういって背中の徳利を見せる。 「うーん、そうだな。クリス、ランジェ、ごめん、二人で食べててよ」 シフォンは少し考えてから、確かに色々話もしたいしということで、二人に声をかける。 「ああ。わかった」 「あんまり遅くならないようにね」 クリスもランジェも笑顔で答える。そうすると、大蛇丸がシフォンの肩に腕を回して屈託なく笑う。 「すまねぇな。ちょいと借りるぜ」 「ええ、でもシフォンにお酒のまさないでくださいね?」 ランジェがあらかじめ大蛇丸に釘をさす。どうやら以前にも似たようなことがあったらしい。 「わかってるってぇ!ま、今度ん時はアンタと二人きりで飲みたいねぇ」 「お断りいたしますv」 片目を瞑ってさらりと誘うが、それは可愛らしい微笑みでずばりと断られた。それにクリスとシフォンは思わず「ぶ」と笑いを吹き出しそうになり、大蛇丸は眉を下げて「参ったねぇ」という風に肩をすくめた。 「ぷはーっ!ぅめぇーっ!」 焚き火を挟んで向かい合わせに腰を下ろす。大蛇丸はさっさと徳利の蓋を開け、酒を器に注いで一杯のみほした。シフォンは、それに付き合ってはいるが、飲んでいるのは酒ではない。 「相変わらずだな。大蛇丸」 その豪快な飲みっぷりに呆気となりつつも苦笑する。 「おおよ!やっぱ戦のあとはこれがなきゃあなぁ!」 「お前は戦のあとじゃなくても飲んでるじゃないか」 「はははっ、まぁ、いいじゃねぇか!美味いもんを美味いと感じる、こいつぁ大事だぜ?」 シフォンの言葉にけらけらわらって、もっともな事をもっともらしくいう。 焚き火はぱちぱちと薪を焼き、小さく爆ぜながら赤々と燃えている。周りを見渡せばどんどん暗くなってゆく景色に灯る幾つもの暖かな明かり。座談し、酒を飲み交わし、笑いあう人々。こうして見ると、何故だか戦争中とは思えない。 「にしても、腕をあげたみてぇだな、シフォン。おまけにいい獲物も手に入れたみてぇだし」 「ああ、これか?」 腰からはずし、すぐ脇においてある剣を手にとって、鞘から抜き取る。 幅広のかなりの大剣だ。だが、手に余る重さではなく、馴染む感じだ。透明な銀の光の剣影をはなち、その刃にシフォンの顔をうつす。もっているだけで、まるで力が湧き上がってくるような気さえするその剣。 「『天魔剣』といって、昔神が大魔王を倒すために作ったものらしい。スペクトラルタワーに登った時、あの5勇者のうちの一人、グレイから貰ったんだ」 「へぇ。そいつが噂のねぇ」 「こいつがあれば、きっと大魔王を倒せると思う。だから今回の戦を足がかりに、俺達は一気に大魔王へ攻撃をしかけるつもりなんだ」 「ふぅん・・・大魔王ねぇ・・・・」 ぎゅ、と剣の柄を握り締め、シフォンは心を決めた強い光を持つ瞳でその天魔剣をみつめる。大蛇丸はもう一度器に酒を注ぐ。 「なぁ、シフォン」 「ん?」 くいと一口飲んでから、大蛇丸がおもむろに声をかける。シフォンは天魔剣を鞘にしまい、カップから湯気の立つコーヒーに口を付け、視線を大蛇丸へ向ける。 「お前、惚れてる女っていんのか?」 次の瞬間、シフォンは飲んでいたコーヒーを勢いよく吹き出した。焚き火を挟んでいたため、大蛇丸のほうまでには届かなかったが、かなりの勢いに大蛇丸は思わずあとずさっていた。 「げほ、げほっ!」 そうしてむせ返り、かなりのせきを繰り返す。 「・・・っな、いきなり、何、言い出すんだよ!」 けほけほと喉の調子を整えながら、シフォンは涙目で、かつ頬を赤くしながら大蛇丸に問い掛ける。 「いやな。お前さんにだって守りたいもんはあるだろ?」 「そ、そりゃ・・・まぁ、当たり前・・・だろ。俺はこの世界の平和を守りたいから戦って─────」 「いや、そうじゃなくてよ」 シフォンの言葉をぴしゃりと大蛇丸は否定する。 「確かに平和を守るってぇのは立派だ。だが、それ以前に自分自身の周りの事も考えた方がいいんじゃねぇのか?人一人幸せに出来ねぇで、世界平和なんざ笑わせるぜぇ?」 「・・・・・・・・・」 「今回の戦を皮切りに、大魔王討伐のために各国から兵が出るだろ。とうとう全面戦争ってやつだ。だからその前にそれ考えといた方がいいと思ってな。いざって時、本当に何より守りたいもんがありゃ、人間なんでもできるもんさ」 にぃ、と屈託なく笑って見せる。シフォンはそれに黙ってカップの中のコーヒーにうつる自分を見る。 「んで、どうなんだ?」 「え。」 「だから、惚れてる女だよ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ぶり返された質問を受けて、シフォンは真っ赤になって言葉を失う。それから視線を横へ流し、わずかに俯き、首筋をかく。カップを置いて、口をつぐんでますます顔を紅く染めていた。その様を大蛇丸は意地の悪い笑みで見ている。 「・・・・いるよ。・・・・・一応。」 「へぇ!どんなんだ?」 「どんなって・・・・何ていうか・・・幼馴染みで・・・・気が強くって・・・でも一生懸命で・・・・そこが・・・結構可愛くて・・・」 ごにょごにょと聞き取れないような発音でシフォンはたどたどしくいう。 思い出すのは故郷の街にいる赤とこげ茶の髪の少女。元気がよくてくるくる表情が変わって、一緒にいて楽しかった。でも負けん気も強くて喧嘩もよくして。そういえば喧嘩の腕もなかなかだったなぁ。とか思い出す。獣人を素手で殴り飛ばしたりして。 真っ直ぐで一生懸命で。 ・・・ああ。そうだ。久しく会っていない。帰ると約束していたのに、自分はタワーから戻ってきてすぐにカムリアに来た。あの街には帰っていない。 ・・・・何だかすごく、あいたくなってしまった。 「・・・・・・・エルティナ・・・・」 ポツリと、おな馴染みの少女の名を零す。 「ん?える・・・なんだって?それがお前さんのコレの名前か?」 そういって小指をたててにやにや笑う。 「ば・・・・っ!お、お前には関係ないだろ!変な言い方するなよ!」 頬のみならず、耳も赤くして怒鳴る。しかし大蛇丸は相変わらず笑っている。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 何だかその笑みを見ていると非常に悔しくなって、シフォンはむすりと口を尖らす。そうして少し考える。 「・・・お前は、どうなんだよ」 「あ?」 「お前にはそういうの、いないのかよ」 自分のほうばかり聞かれていては癪だ。された質問をした本人に突き返す。だが、 「いるぜぇ?都に帰れば俺の帰りをまってるイイ女が沢山な!」 酒を相変わらず早いペースで飲み干しながら、にたりと笑う。 「・・・・・・・・・・・・・・」 しまった。質問が悪すぎた。この男のそういう趣向を忘れていた。シフォンは思わず額に手をあててため息をつく。 「いや・・・そうじゃなくて」 そうじゃなくて。 確かにこの男にとって都で待つ数多くの女性は、全て本当に大切なのだろう。遊びで一回でさよならとかそういうことはしなさそうだ。けれど博愛主義と言うのでもなく。 「・・・そうじゃなくてさ、本当に、こいつだけ、ってのはいないのか?」 「─────────」 視線がわずかに泳いだ。だが。 「─────さぁてねぇ。」 と含み笑いをされ、それはそれ以上の質問を受け付けないというふうにもとれ。 「・・・・・・・・」 シフォンは少しふてくされたように膝に肘をついてむすりとする。 問われてもほとんど態度に変化がない。それどころかさらりとかわされて。自分とのその差が何とも悔しい。 「ちぇ。俺だけ言って、ずるいぞ」 「はははは、まぁ、とりあえずのめよ!」 ふてくされるシフォンに、大蛇丸は酒を進めるように徳利を向ける。 「ランジェに言われてるし、明日も早いからいいよ」 「まぁ、そういうなよ。少しくれぇいいじゃねぇか!」 しししし、と子供のような屈託ない笑み。 「いいって、あ、こら!!」 からになっていたコップに強引に酒を注ぎ込む。止める間もなく透明な穀物酒でいっぱいになる。 「ほらほら、くーっといけよ!酒飲んで、美味いもん食って、たっぷり寝て!ついでに美人なねーちゃんが添い寝してくれたらぁ、もう最高だな!」 「お前なぁ・・・・」 呆れかえりつつ、シフォンは少しだけその酒をなめるように飲む。かっと喉を焼くような辛さ。 「うわ、お前、コレめちゃくちゃキツイじゃないか!」 少しだけなのに一瞬アルコールにくらりときて、シフォンは声をあげた。 「あぁ?そうか?俺はいっつも飲んでるやつだけど・・・」 「いつもこんなの飲んでるのかよ・・・・」 改めて思うが、こいつ、いろんな意味で凄い男だ・・・。 半眼になってシフォンはげっそりと思う。 「しょうがねぇなぁ、だったらどっかから度数の低い酒でも・・・」 「ていうか、その前に俺、未成年なんだけど。」 「ああ、そういやそうだったなぁ!忘れてたぜ!」 そう言って豪快に笑い飛ばす。シフォンはそれにもう一度呆れ、だが苦笑して、そうして一緒になって笑う。 こんな戦争の最中だと言うのに。 気兼ねなしに笑えること。くだらない話をしたり、酒を飲み交わしたり。そう言う事が出来るのはひどく貴重だ。そうして、ひどく大切な事でもある。 「まぁ、一緒に酒は飲めないけど、今回俺はコレで、もう一度乾杯しないか?」 そう言って別なコップに新しく入れたコーヒーを見せる。 「しょうがねぇな、んじゃ、改めて」 徳利から器に酒を注ぐ。そうして軽く掲げ。 「乾杯」 かしん、と鈍くも心地よい音がなった。 「さて、と。」 夜もふけてきて、空には無数の銀と金と、蒼白の星。 「そろそろ戻るよ」 「おぉ。付き合わせちまって悪かったな」 「いいや、久しぶりにゆっくり話ができてよかったよ」 シフォンが帰ろうとたちあがっても、大蛇丸はまだ徳利を放さない。 「明日は勝とうな」 実に美味そうに飲む男に、シフォンは小さく笑って声をかける。 「俺がいるんだ、万に一つも負けねぇよ」 いつもの不敵で不遜な笑み。それは揺るがない自信と実力からくるもので。 「いってろよ」 それは誰しもが認めるところだ。 「じゃあな」 そういって立ち去ろうとしたときだ。 「シフォン」 不意に名を呼ばれ、振り返ろうとした瞬間。ひゅん、と、風を切り裂くかまいたちのような音が鳴る。そのまた次の瞬間。がきん!と刀と剣の刃が激しくぶつかり合う音が、夜の闇に鳴り響く。 「・・・・・・・・・・・・」 ギリギリと、切っ先同士がこすれ合う音。剣花が散る。 「・・・・へっ」 「・・・・・・ふん」 昇陽を手に持ち斬りかかった大蛇丸。それを瞬時に天魔剣を抜いて止めたシフォン。 お互い視線がかち合って、にやりと笑う。 しゃん、と先に引いて大蛇丸は鞘に刀をおさめる。同じようにシフォンも腰の鞘に入れた。 「やっぱいい腕してるなぁ。お前」 「そりゃ修行したからな」 素直に感心して腕を組んでいうムロマチ君主に3勇者の一人は腰に手をあて、少し得意そうに言った。剣豪、としても名をはせる大蛇丸に言われるのだから、その腕は本当に確かだ。 「・・・・・そういや」 「ん?」 ふと、思いついたように。 「・・・お前さんとはまだ真剣で戦った事、ねぇよな」 「・・・・・・・・・・・」 戦いに身を置く者の、その強い者と戦う事の喜びの視線。高揚し、いてもたってもいられなくなるような昂ぶり。 「・・・なら、ここでやるか?」 その視線を受けて、シフォンもにぃ、と笑って挑戦的に好戦的な視線を返す。 「─────────」 しばしの間。そうして、へらっ、と大蛇丸が口をゆるんだ笑みで崩す。 「いんや。今はやめとくぜ。お前さんに怪我でもさせたら他の奴らにどやされっちまう」 「どういう意味だよ。俺はそう簡単に負けないぞ」 まるで自分が負けるという風な感じに言う大蛇丸にシフォンはむすりとする。 「はははっ、そうだな。悪かったよ」 「・・・・・・・・」 何だか子供をあやすようにあしらわれた気がしてますますふくれる。 「そんな顔すんなって!んだが、この戦いが終わったら、本気で手合わせ願いてぇな」 ひたり、とシフォンを見て、不敵に笑う。真剣の表情。 「・・・・いつかな」 その獣のような気配に、ぞくりと高揚を覚える。自分も戦ってみたい。この男と。そう身の内が叫んでいる。 「ああ、いつかな」 戦って戦って。身を焼くほどにふるえる想い。勝敗の行方より何より。強い者と戦うと言う事。 全力を出し切り、全てがわからなくなるほどに全身全霊をかけて。 救えないほどの性(さが)。自ら進んで修羅となろう。 「じゃあな。明日」 「おお、死ぬんじゃねぇぞ?」 「お前こそ」 そういって、同時に笑う。 シフォンは焚き火の炎に背を向けて歩きさる。光の届かないところは、さらに濃い闇を彩り、シフォンの姿を隠した。 大蛇丸は焚き火の前に腰を再び落とす。 ぱちぱちと爆ぜる炎。周りの木々は炎の灯かりに照らされて、ぼんやりと橙の色をうつす。影になる葉は濃い緑に染まる。薄い煙が天に向かって昇ってゆく。その様を、大蛇丸は目を薄めて眺めた。 「・・・・いつか、な。」 ふ、と小さく笑う。 大蛇丸は、再び器に酒を注ぎ、ひどく美味そうに、それを飲み干した。 ←小説トップ |
終了・・・。 かなりキャラが違うと思われます。 とくにシフォン。 この中のシフォンは大蛇丸にタメ口きく、かなり勝ち気で真っ直ぐな少年です。 フォース1の大蛇丸VSシフォンで見られる感じの。 一応、私の中のシフォンの経緯というのが、まず10歳くらいのころにモンコンやって、それからカムリアにヒヨコムシ帰しにいって、そこでラーデゥイ達と出会う。 一度故郷に帰り、それからタワーに登る。それからグレイに天魔剣もらって、そうして以前のつてでラーデゥイ達のところへいってそのまま勇者軍に参戦。 ・・・という風にしているんですが・・・かなり、無理・・・ありますか。・・・ははは。 ・・・えー、とりあえず、前記にもありましたように、この小説のシフォンはフォース1とかで見られる、勝ち気で真っ直ぐな少年です。イメージ違う!と思われてしまった方、すみません(TT) でも私の中のシフォンは、大蛇丸にはタメ口なんですよ。敬語で話さないんですよーっ! うー・・・全体通してみると、大蛇丸&シフォン、ていうより大蛇丸の話ですね・・・。 01/01/20 |