一緒に、紅茶を。




 スペクトラルタワーを制し、人を極めし者。
 闘神と呼ばれる男。ウェイブ。
 全ての力と引き換えに、人の心を失ってしまった男。


 その男が、地上へと舞い戻り、その力を持ってネバーランド大戦に参加した。
 その目的を知る者はいない。
 ただ、圧倒的なその力に、ひれ伏すのみで。


 国をとり、領土を広げ、各国へと侵攻する。
 血埃の舞い上がる戦場で、男は何を想うのか。


 そんな時。
 かつてなくした過去を共有する少女が現れた。
 スペクトラルタワーにある、小さな町にすむ少女。
 失った優しさを知る、真摯な瞳の少女。


 少女は破壊をもたらす己のもとにいたいと言った。
 男は少女の存在を苦く想う。
 何度おいかえしても、少女は真っ直ぐに男をみつめていた。
 優しい笑顔を取り戻してと。
 全てを手に入れた男の、唯一なくしたものを少女は持っていて。
 少女は揺るぎなく、おくさず、ただまっすぐに男をみつめていた。


 男は、少女を受け入れる。


 「ウェイブ様!おはようございます!」
 光に透けると金色に光る金茶の髪に、夜明けの透き通るような紫がかった蒼い瞳を持つ少女。
 声は心地よい響きで朝の日差しの差し込む部屋に聞こえる。
 部屋に入ってみれば、その部屋の主は既に起きていて、身支度も整えていた。
 返事はせずに、視線だけを少女に向ける。
 頬や肩に落ちかかるほどに伸びた茶色の髪に、蒼い海とついなす翠の海と同じ色を持つ瞳。
 鍛え上げられた肉体には、想像もつかない力をひめている。
 「アルか」
 声はさほど低くはないが、底知れぬ威厳を持つ。
 「朝食をお持ちしました、ウェイブ様」
 ウェイブの身の回りの事は、彼女が仕官して以来から、彼女の仕事だ。今までは、仕えていた女中達 がかわるがわるにしていたが、それを全てアルが引きうけた。
 身の回りの事、と言っても、そんなにある訳ではない。第一、ウェイブが、自分に干渉される事を嫌 う。それ以前に、誰もが近寄りがたい雰囲気を持っているので、おいそれと声もかけれない。
 それを、本来の仕事がてらにアルがやっているのだ。
 「ああ」
 ここ数ヶ月、いつものようにきちんと決まった時間帯に持ってきてくれるので、ウェイブは当たり前 のように椅子に腰掛ける。
 「今日は美味しいお野菜を女中頭のカンナさんがご実家から持ってきてくださったんで、それをフォ レストさんがつかって作ってくださいました。サラダもスープもいつも美味しいですが、今日はもっと 美味しいですよ」
 もくもくと食べ始めるウェイブの横で、アルが手間暇かけていれた紅茶をカップに注ぐ。
 「どうですか?」
 「・・・ああ、そうだな」
 紅茶を差し出し、ゆったりと笑うアルに、ウェイブは相変わらずの色のない表情で応える。だが、そ れでも満足そうにアルは笑う。
 「今日の予定は」
 アルから紅茶を受け取り、一口飲んでから問いかける。アルは朝食と共に持ってきた資料を手にとっ て、読み上げてゆく。
 「先月の戦闘で被害にあった町の復興状況の視察があります。あと、フリージィの増壁依頼がきてま す。それから、同盟国のムロマチ軍からの遣いの方とあうのが午後からあります。あとはあとでお持ち します書類に目を通していただいて、次の戦闘準備。予行演習の方にも出ていただきたいと申告があり ました」
 「わかった。・・・今日はいつもよりも少ないな」
 「はい。皆さん、ウェイブ様のために頑張ってますもの」
 微笑んでその問いに応える。
 「・・・・・・・」
 真っ直ぐな、真摯な瞳。
 時々それが、失った何かを呼び覚ますかのように光る。
 「紅茶のおかわり、いかがですか?」
 それがいつもの朝の風景。



 数日後。
 「ウェイブ様」
 女中がドアをノックして、そっと静かに部屋に入る。昼食を済ませ、仕事をし、一段落する夕方頃、 一息入れるための紅茶を持って行くのもアルの日課だ。だが、今日はアルではなかった。
 しかし、今日の仕事がまだ片付かず、ウェイブは山のような書類と向き合って、返事もしない。気が ついてはいるのだろうが、振り返りもしなかった。
 女中はとりあえず、いつものように紅茶を入れる。それを邪魔にならないよう、ウェイブの元へ置く。
 「どうぞ」
 ペンを走らせながら、ウェイブはそれに手をかけて一口飲む。が。
 「・・・・アルはどうした」
 「え?」
 いきなりの質問に女中は驚く。
 アルが忙しくて、ときどき紅茶をもって来れない時もある。そんな時は今日のように、他の女中達が 持ってくるのが当たり前で、ウェイブもそれを知っているが、今日に限って、ウェイブは問いかけてき た。
 「ア、アル様は・・・その、今、忙しいのでこちらには来られないとの事なので・・・・」
 「それはわかる。だが、いつもは・・・・」
 そこまで言ってウェイブは口を噤んだ。女中は訳がわからず首をかしげる。
 ウェイブが質問した訳。それは。
 いつもと紅茶の味が違う。
 それだけだ。
 だが、彼女がこれない時でも、紅茶だけは彼女がいれたものを女中達が持ってくるのだ。
 それが今日はいつもと微妙に味が違うのだ。けしてそれは美味しくないと言う訳ではない。何も知ら ない人が飲めば、多分絶賛するだろう。なにせ、いれているのはその道ん十年という女中頭だ。それに、 ウェイブにいれるのだから万一にもそんな、美味しくないものなど入れれるはずもない。
 「・・・・いい。下がれ」
 「は、はい」
 何やら、いつにもまして不機嫌そうな気配がしてきて、女中は素直に従って部屋を出る。
 「・・・・・・・・・・・・・」
 紅茶を入れれぬほど、そんなに忙しいのだろうか。
 知らずにそんな風に考えて、はた、と思い至る。
 別にそんな拘る事でもない。たかだか紅茶だ。
 だが、慣れ親しんだものを得られないと言うのは何やら落ち着かない。
 「・・・・・・・」
 ウェイブは、いつもと違う紅茶を飲み干した。


 次の日、いつもの時間帯に朝食を持って現れたのはやはりアルではなかった。
 ウェイブは相変わらず、表情を崩さず、それでも不機嫌そうになっているのが、何となく周りの者達 は気がついていた。伊達に何年もこの国に勤めてはいない。
 紅茶は、やはりいつもと違う味で。
 「・・・アルはどうした。そんなに忙しいのか?」
 「え、あ、はい。その、なんでも担当を任されていた地域の方で、えと、徴兵配置の手違いがあった とかで、でも、もうそういう風に書類を申請してしまっていたので、それを全てやり直しているそうで ・・・」
 「・・・・・・・・」
 そんな報告は受けていない。  ・・・だが、任されたところの責任は、きちんと自分で負うのが常識で、アルはそうしているだけだ。
 「・・・そうか、わかった。下がっていいぞ」
 「はい、失礼いたします」
 女中はなれた動作で、音なく部屋から出た。
 ウェイブは我知らず、椅子の背もたれに全身をあずけるように座り、ほんの僅かに溜め息をついた。
 「・・・・・・」
 紅茶を飲む習慣は、アルがきてからだ。
 それまでは、とくに拘りがある訳でもなく、ただ、女中達が一息入れてもらおうと持ってきてくれた ものを飲んでいるだけだった。いらない時は断りもした。味は特に拘らず、不味くなければそれでいい。 ウェイブはそういう事に関してはとんと無関心だった。
 だが、アルは、ふと、飲みたい時にすぐいれてくれて、それが自分の舌にあっていて。
 それからいつも紅茶は彼女がいれてくれるようになり、それがいつの間にやら当たり前になっていた。
 いつも得ていたものを得ないと、さすがのウェイブでも、何やら落ち着かないようで。
 「・・・・・・・・。」


 「おい、ウェイブ様、かなり不機嫌じゃないか?」
 「やっぱりそう思うか?」
 「思わない訳ないじゃない。いつも表情を変えないあの方の眉間に、さっき見たら、皺が入ってたの よ?」
 「・・・よくみてるな」
 こそこそと、女中達や兵士達の会話がそこここで小さくわき上がる。
 「あの人があんまり不機嫌になったら、俺達じゃ手に負えないよなぁ」
 「でも、アルさんが・・・」
 「そうよねぇ・・・」
 何やら含んだような会話も聞こえてくる。


 やはりその日の昼も。
 と、いうか、昨日から一度も姿を見ていない。彼女は一応ここの軍師なのだから、いくら自分担当の ところで問題があったとしても、君主に何度かはあいに来ざるをえないはずだ。それが、別の者に代わ ってもらって。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 不機嫌度、MAX。
 「・・・・・・・・・・・・・・。」
 「・・・・・・・・。」
 「・・・・・・・・・・・・。」
 周りの者達は、かなりはらはらしながらウェイブを見守る。
 彼にしては珍しく、苛立っているようだ。下手に触ると噛み付かれそうな気配が彼を包んでいる。
 と。
 どうも落ち着かなくて、昼食を終えたあと、ウェイブは中庭へとでた。やはり別段興味がないので、 庭師に好きなようにやらせているが、見事に整えられている。そこここに植えられた、季節ごとに咲 き変わる花々。心地よい木陰をつくる木々。
 「・・・・・・・・」
 また、知らずに空を見上げて小さく溜め息をつく。
 たった数ヶ月前までは、こういった事はなかったのだが。
 そのたった数ヶ月間でこうも体が、感覚が慣れてしまって。以前に戻っただけなのに、その違和感の 何と激しい事か。
 「・・・・・何を考えている」
 一人ごちて、目元に落ちかかる前髪をかきあげる。
 「・・・丈夫?アル様は」
 「・・・ええ、だから何度もお休みになった方がいいといってみたんだけど・・・」
 渡り廊下を歩く女中の会話。耳に届いて反応する。
 「でも、だからって病気の事を隠してまで、お仕事しなくてもいいのに」
 「アレよ、まだここに来たばかりでしょ?それなのに風邪で寝込んだら、皆様に迷惑かけるって」
 「どういう事だ」
 「!!!!!」
 若い女中達が突然会話の途中に入れられた横槍に声を失って驚く。
 「ウ、ウェイブ様?!」
 「いつの間に・・・」
 「どういう事だと聞いている」
 ついさっきまで、後ろにいなかったはずなのにと、女中達が驚くのをよそに、ウェイブは質問を繰り 返した。その妙に不機嫌な気配に女中達は身をすくみ上がらせる。
 「あ、えと、その・・・」
 口篭もってなかなかいわない。
 「答えられないのか」
 短い言葉は、必要以上にウェイブを恐ろしく見せる。女中達は思わず息を飲んで、目を見合わせる。
 「・・・・その、何といいましょうか・・・」
 ウェイブは怖いが、一度交わした約束をおいそれと破る訳にもいかない。かと言って、いわずにいれ ばウェイブの機嫌はますます悪くなる。女中たちは滝のような汗をながす。
 「・・・つまり、アルは仕事で忙しいのではないのか」
 答えられない女中達の言葉を代弁して、ウェイブが再度問いかけた。
 「・・・・・・」
 無言で小さく頷いた。
 「・・・・・・・・・っ」
 顔をしかめ、僅かに舌打ちをした。そうして、マントを翻して、いつもよりも広い歩幅でずかずか歩 きさっていった。


 「これのまとめを、今日中にお願いできますか?」
 「わかりました。あとは」
 「はい、こちらの・・・報告書を、国境警備隊長のディードさんに。お願いします」
 手際よく、たくさんある紙の束の中から、何枚か取り出して、渡す。
 「はい。・・・アル殿、そろそろお休みになられてはどうですか」
 書類を受け取った、文官系の中年の男が気遣わしげな視線をアルに向ける。すると、アルはにっこり 笑って答えた。
 「大丈夫ですよ。もう大分いいですから」
 「ですが・・・」
 さらに何かを言おうと口を開いた時だ。
 「ウェイブ様!!あ、あの、アル様はいま・・・!」
 精緻な造りのドアの向こうから女中の慌てた声が聞こえた。驚いて視線がドアへと集中する。そうし て、次の瞬間、ばたん!!とけたたましくドアが乱暴に開け放たれ、翠の瞳を持つこの国の君主が現れ た。
 「ウ、ウェイブ様!」
 狼狽した声を上げたのは中年の男だ。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ぐるりと部屋を見渡し、一人の娘の姿をその視界にとらえる。
 アルは、さほど大きくないベッドの上にいた。上半身を起こしているものの、しっかりと上掛けのシ ーツを足元にかけ、肩を冷やさないよう、柔らかいアイボリーホワイトのカーディガンがその細い肩に かけられている。簡易の小型のテーブルを設け、その上に広がるのはさまざまな事を書き記してある紙の山。
 側には見慣れた軍医が付き添っていた。
 「・・・・ウェイブ様」
 アルも、驚いたように呟いた。
 「・・・・どういう事だ」
 歩みより、ベッドのわきまでいくと窓から差し込む日の光を背に受けてアルをその翠の瞳で見下ろし た。常は感情のともらない、いや正確には感情がよめないその瞳に明らかに苛立った色が見うけられる 。
 「・・・・・・」
 そんなウェイブをアルは黙って見上げた。
 「俺は手違いの修正のために仕事が忙しいと聞いていたが?」
 「・・・はい、そうです」
 「では、なぜお前はそんな格好をしている」
 「それは・・・」
 その質問に、横にいた軍医が言ってきた。
 「ウェイブ様、どうかお許しを。確かにアル殿は軍師として常に君主を支える立場、昨日今日と、代 役の者をたててしまいましたが、それは私がそうしろといったのです」
 「軍医様」
 アルが慌てたように声を上げるが、軍医は構わず言葉を続ける。
 「アル殿は、まだここにきて半年を過ぎたばかりです。慣れない事もありましょうに連日連夜の忙し さで、体が弱っていたのです。それで・・・昨日、お倒れになってしまったのです。ですが、養生を進 めても、己のできるべき仕事だけでもと」
 「・・・ではなぜ、倒れた事をだまっていた。いえばそれなりの対処をしたのだぞ」
 「すみません・・・」
 軍医の言葉に、ウェイブがアルの方を向いて再び質問する。アルは答えずにただ謝った。
 「謝るな。ちゃんと答えろ」
 「・・・・・・・・」
 「ウェイブ様!」
 アルのかわりに声を上げたのは、先程の中年の男だ。
 「アル殿は、ウェイブ様にいらぬ心配をかけぬようにしただけです!どうか、お許しを!」
 「・・・・・・・・」
 ウェイブはそれに、僅かに眉をひそませて小さく一つ、溜め息をついた。
 「・・・少し表にでていろ。アルにだけ話がある」
 「え」
 「はやくしろ」
 声を思わず濁らせてしまった軍医と中年の男にウェイブは再度威圧をかける。それに思わず身をすく め、その部屋にいた者は慌てたように部屋を出る。心配そうに、アルを見ながら。
 「・・・・・・」
 パタン、と、最後の一人がドアを閉め、その部屋にはウェイブとアルだけになった。
 日は、高くもなく、かといって低くもない中空の位置で輝いている。日差しは強くなく暖かい。
 「・・・・申し訳ございません、勝手な事をしてしまいまして・・・」
 恐縮しきったように、本当に申し訳なさそうな声でアルは頭を下げる。ウェイブはしばらくそんなア ルを見て、それからベッドのはしに不意に腰を落とした。
 「!」
 軽くスプリングが揺れて、驚いてアルは顔を上げる。見れば、ウェイブの手がこちらに伸びてきて、 反射的に目を瞑る。
 「・・・まだ少し、熱があるな」
 だがその手は、金茶の前髪をさけ、額にあてられた。大きくて広いその手の暖かさ。思わずアルは頬 を赤く染める。
 全てを失い、感情をもあらわさない闘神。だが、冷たく感じるその存在は嘘だ。この手は、こんなに も心地よく暖かい。
 「・・・・確かにお前のした事は軍師としては失格だ。己の体調管理も仕事のうちだろう」
 「はい、申し訳・・・」
 「謝るな」
 「・・・・・・・」
 ぴしゃりと言葉の先を遮られ、少し困ったような表情をアルはむける。相変わらず、ウェイブは表情 を崩さずにこちらを見ている。
 額に当てられた手が、そっと頬を包み込む。
 「・・・はやく治せ。まだ仕事は山積みなのだからな」
 そういうと、ウェイブは頬から手を離し立ち上がる。マントがばさりと音を立てた。
 「で、ですがウェイブ様!!私は・・・!」
 頬に触れられて、額に手を当てられたときよりもさらに顔を紅潮させて、茫然としていたアルは、そ の音に我にかえって、こちらに背を向ける君主に声をかける。
 「・・・・紅茶を」
 「え?」
 普通なら、厳罰ものだ。君主の心境如何では首にさせられる事もある。それなのに、何も処罰がない。
 ウェイブは声をかけてきたアルの方を、肩ごしに見やる。
 「・・・はやく治して紅茶をいれてくれ。・・・どうも落ち着かん」
 「・・・・・・・!」
 色のない表情に、本当に僅かに、常なら絶対に気がつかない程度に。変化があった。
 少し、照れているようだ。
 「わかったな」
 「・・・・はい!」
 アルは胸が締め付けられる想いがした。紅潮した顔のまま、押さえ切れなさそうに、それでもおさえ て少しほころんだような笑みで返事をした。少し、泣きそうだ。
 その返事を聞いて、ウェイブは一間おいてから部屋を出ていった。


 そして。
 「今日は僭越ながら、お菓子を作ってみたんです。お茶請けにいいとおもうのですが・・・」
 次の日、アルはちゃんと体調を整えて、ウェイブの前に元気な姿を見せた。
 周りの者は、やっとウェイブを包んでいた不機嫌な気配が拭われて心底ほっと、胸を撫で下ろす。
 「甘いものは、お嫌いじゃなかった・・・ですよね?」
 好き嫌いはまったくない。
 ただ、別に好んで食べるほどではないだけだ。
 ウェイブはアルの作ってきてくれた菓子を何も言わずに食べる。
 「お口にあいますか?」
 「・・・ああ」
 短い返事。だが、それでもアルは嬉しそうに微笑んだ。
 アルのいれてくれた紅茶は、やはり己の舌にあうようで。
 女中頭の紅茶もうまいとは思うが、好みとしてはアルの方らしい。落ち着く。
 「それでは、何かあったらお呼びください。隣の部屋にいますので」
 だいたい、一息つく時は一人で静かにウェイブは時を過ごす。だからそういう時は部屋をでるのだ。
 「アル」
 「はい」
 呼ばれて振り返る。金茶の髪が揺れて、窓から差し込む光を含み、金色に光る。
 「・・・一緒に飲まないか?俺一人では、これは食べきれん」
 「 ────── 」
 そんなに量がある訳でない菓子を指差して、ウェイブは言った。
 相変わらず、色のない表情で。だが。
 アルは驚いたように声を止める。だが、それから次第に笑みで顔をほころばせてゆく。
 常なら、言われないはずの言葉。
 「・・・・はい。」
 心にわき上がる想いを、笑みにかえ、アルはひどく幸せそうに答えた。


   ─END─



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これはタカノさんの2000ヒット記念に贈ったもので御座います。 今まで、サイト上げしてはいたんですが、リンクを貼っていなかったんです・・・。 それに気がついてなかった自分。馬鹿。 個人的に気に入っている話でもあります。 うちのウェイブさんは、アルの存在が当然なんです。いないと落ち着かない。 ・・・熟年夫婦?やはりウェアル、いいですよねぇ♪(サトヒロは別格。)