「ありがとう。」






 ──────夢をみた。


 真っ暗な闇。
 全てを飲み込む夜。
 恐ろしくて押し潰されそうで。
 でも同時に優しく静かな冷たい褥(しとね)。

 自分は一人でそこを歩いていた。
 灯かりももたず。
 誰と一緒でもなく。

 ただ一人で。

 耳が痛いほどの静寂。
 先などみえない黒い闇。

 包み込む腕(かいな)。
 どこか安らぎを覚える虚空。

 誰もいない。
 誰もいない。


 誰もいない。


 一人、歩く。


 ゆっくりと。
 ────ゆっくりと。


 ぽつんと。
 光がみえた。

 暖かい光。
 肌を刺すような金。


 声が聞こえる。

 風のような。

 雨のような。

 遠い古い歌を謳うような。


 ─────酷く、心地よく。

 ─────あまりにも、痛い。





 愛しく、切なく、心を癒しながら壊す声。

 何よりも。

 誰よりも。



 だいすきな、声。











 ──────目が覚めた。


 月の光。

 青白い闇。


 …一人。


 ────涙が、でた。



 光。


 あの中にいつもいた。


 お前。





 あれから夢も見ず過ごしてきたのに。



 今日、お前が出てきたよ。




 沢山の暖かい光の中。

 笑顔で。




 自分のしってる全ての笑顔。

 あまりにもお前は優しく笑う。

 本当に、嬉しそうに。

 本当に、楽しそうに。

 本当に、無邪気に。



 ────本当に、愛しげに。




 あの時のままで。

 本当に。

 あの時のままで。

 優しく。

 笑うんだ。



 どんな夢かほとんど覚えてないのに。

 黒い闇と、お前の笑顔だけ覚えている。

 あんまりにも、暖かく笑うんだ。


 いつもと同じように。







 もう、いないのに。








 
 癒しながら傷つける。

 重い枷であり、力強い翼である。






 そこに、いたのに。







 …もう、いないなんて。




 ─────本当に、夢のようだ。









 それでも時は流れる。

 大丈夫。

 この傷は癒える事なく、癒そうとも思わない。

 抱えたまま、生きてゆくよ。



 大丈夫だ。

 なんとか生きていけるさ。

 お前の分も。




 全てを投げ出して。

 お前の後をおいたかったけど。

 その背中をつかまえていたかったけど。

 お前は手をふりはらったんだ。



 私は。

 お前とずっと一緒にいたかっただけなのにな。

 お前は。

 自分勝手だよ。




 今度掴まえたら絶対一発殴ってやる。

 そうして二度と離してやらないよ。

 お前が何といおうと。

 絶対に。




 それまでは一人で生きていくよ。

 大丈夫。

 でも、絶対に許してやらないからな。

 


 だから。

 



 ……ありがとう。















02/02/01

ブラウザの戻るでおもどりを。











サトーがいなくなったあとのヒロ。
時が傷を癒してくれると言うけれど。
ヒロはあえてその傷を抱えたまま生きていくのだと。
…あれなんですよ。例え何があっても一途にずっと想っていてほしいなぁと言うか。
しばられて生きていると言ったらそれまでなんですが。 なんていうのか…陳腐な言葉にしか聞こえないかもしれませんが、全てを投げうってでも本当に側にいたいと思える人を見つけれるのはいいなぁと。
何かいつもいってる事と違うじゃないかとかいわれそうですがね。
というか…うーん。何と言ったらいいのか。
昔気質なんでしょうかねぇ。私は。
サトーだったら、自分はいいから、姫さんの幸せを見つけてくれよっていいそうです。
でも姫は多分、そんな事言われたら泣きそうですな…。
サトーはヒロが幸せになるなら、確かに忘れられるのは哀しいし辛いけど、本当に幸せになってほしいと思うから。
けれどサトー以外の、それ以上のものをみつけていないのにそんな事をいわれても、この先にあるかもしれないとしても、姫はサトーは失いたくないと思うんです。
それこそ、あとをおっていってしまいたいと思うほど。
端から見たりするとそれは滑稽かもしれないけど、その人にとっては、その時、その瞬間、相手だけなんじゃないかな…と。
その人にとってはそれが唯一無二の絶対。
…何と言うかものすごっく後ろ向きで閉鎖的で盲目的で現実みてない事いってますか。
でも私は、それだけの人がいるのはいいなぁ。と。思うんです。
そのあとどうするかは人それぞれですが。

こうなったらサトー、生まれ変わってでもなんでも、もう一度姫の側にいけぃ。
あと、これよんで気分悪くしてしまったらごめんなさい。