■すぺよん■
by暇博士さん

ばあれいんたいん(サトヒロ編)


「君は本当に物好きだね。 正直に真実を明かすのも優しさだと」

「御託はいいから、とっとと例のモノを渡せ」

「………」


何度言っても無駄だとわかったのか、チクは小さく溜め息をついて、白衣の懐から錠剤のつまった小ビンを取り出した。

サトーに手渡す。



「これが対姫様の手製チョコレート仕様の特製胃薬。 普通の胃薬とは違って、姫様のチョコレートにだけ絶大に作用する。 だけど、これで大丈夫って言う保障はない。 姫様は天才的な毒物を作る才能の持」


サトーは手を挙げてチクの言葉をさえぎった。


「ンなこと、言われなくてもわかってるさ。 だけどな…姫さんに少しでも嫌な思い、させたくねぇんだ」


「そうか、君はやっぱり馬鹿だね」

「ヘッ、誉めたって何も出ねぇよ」


再びのチクの溜め息に、サトーの苦笑。


誉めてないのに照れてるあたりが馬鹿だなぁ、とチクは思ったが、あえて黙っておく事にした。




時は2月14日

体調は万全。

チク特製(対姫様のチョコレート仕様)胃薬も飲んだ。


これで駄目だったら、きっと自分は所詮そこまでの男だったのだ。

さぁ来い、姫さん!!!! どんなマズイチョコでも、愛さえこもっていればオレは……


ガチャ…


目の前の扉が開かれる。 そこに立つは愛しの姫様こと、ヒロ様。


頬を染めつつ、ややうつむき気味。 普段とは違うヒロに、サトーは危うく悩殺直前。

(可愛い…可愛いぜ姫さん!!)

そしてヒロはサトーに綺麗に包装された小箱を差し出した。


「あ、あの…その……今年はチョコじゃなくて、クッキーを作ってみたんだが……」





 …………クッキー!?




一言後書き それでも食べる…(笑)  





戦とは常に非情。

殺し合いとは無情。

戦争に恋愛感情を持ち込むなんて、愚の骨頂。


……というわけで、



「姫様と別れろ…とは言わないけど、少しはそれを理解してくれないかな?」

「…はぁ? オイオイ、なに言ってんだよ」


チクの警告を、サトーは軽く笑い流した。


「俺が戦場で姫さんに気ぃ取られて、敵に背後取られるとでも思ってんのか?」

「思ってる。 今の君なら、いつ誰に殺されたっておかしくないさ」

「!!」


チクの容赦ない一言に、心外…と言わんばかりに、サトーの眉がピクリと動いた。

いつの間にか、その顔からは笑みが消え失せて怒りの混じった表情となっている。


「チク…、テメェ誰にモノ言って…」

「あ、姫様だ」


とりあえず、チクは誰もいない適当な方向を指差して言ってみた。





「なに!? 何処だ!! 姫さんは何処だ!?」

サトーは思いっきりチクに背を向けて、ヒロの姿を探し始めた。

そりゃあもう、チクの事なんか綺麗サッパリ忘れて。



「……………」





(バカップルめ……!!)




自分が仕向けたこととはいえ見事に存在を忘れられてしまったチクは、ふるふると肩を震わせていた。

サトー「姫さん、どこだーーーー!?」



絶対に不安な人たち


戦とは常に非情。

殺し合いとは無情。

戦争に恋愛感情を持ち込むなんて、愚の骨頂。



バカにはそれが理解できなかったらしい。

……というわけで、




「諸々に支障が出ることを避けるために、サトーといちゃつくのを自粛してください」

チクは剛球ストレートでヒロに言い放った。


「…なッ!? 」


突然の言葉に、ヒロは顔を紅潮させた。


「わ、私がいつどこでサトーといちゃついているだとッ!? そそそんなことは断じてしていない! 間違っても一緒の部屋で寝たりしていないし、天気のいい日には二人で草原に行って膝枕をやってもいなーーーーい!!!!」


そして聞いてもいないのに、そんなことを叫んだ。




くらくら…、と、気が遠くなるのを耐えて、チクは言い放つ。

「………とにかく、自粛してください」

「…じ、自粛も何も、最初からなにもしていないと言っているだろう!!」

「本当ですか?」

「ほほほ本当だ!」


ヒロ様、冷や汗だらだら、顔は真っ赤っか。


とりあえず、チクは誰もいない方向を指差して言ってみた。

「あ、サトーが聞き耳を立ててる」

「なななななに、サトー!? 違うんだこれは違うんだ、あくまでこれはチクの目を誤魔化すためで決してお前を嫌いと言っているわけではなくて、いやだからつまり…」



「…………。」



(駄目だ……新生魔王軍はオシマイだ……)



るるる〜、と涙を流しながら、チクは地面に『の』の字を書いていじけてた。

事実、数ヵ月後に新生魔王軍は、顔色の悪い魔族のお兄さん一人に滅ぼされてしまったとかどうとか…。

チク「新生魔王軍が滅びたら、故郷に帰ろうかなぁ…(遠い目)」



最縁



誰とも会いたくない

誰とも話したくない

そうすれば…この決意が鈍る事もないから……希望を抱くこともないから…






「元気ないね、クライス」


聞きなれた声に、顔を上げる。

忘れたくても、忘れられない人。 一番会いたくなかった人。


「……フローネ」

「辛いのはわかるけどさ、元気出してよ、ね?」


そう言って、いつものように無神経に、話しかけてくる。


「そうだ! これ飲めば元気になるかも!」

フローネは小瓶をクライスに手渡した。







胃薬。




(…………。)




「どうしてお前はいつも雰囲気をぶち壊しにするんだ!!! オレが胃もたれに苦しんでるとでも思ったのか!? ああ!? そんなことを考えるのはその頭か!? その能天気な頭なのか!?」

「いや〜ん♪ クライスが怒ったー♪」

「待てぇッ! 今日と言う今日は我慢できん!!」





(なんだかんだ言っても、あいつら相性が良いんだよなぁ…)

気が付けば追いかけっこをしているクライスとフローネを見て、テモワンはそう思ったとかどうとか。






いやっはぁー!(意味不明の奇声

サトヒロとクラフロのいちゃいちゃ(?)に悶えのたうちまわってる佐々火です。
いやもうええわーええですわー暇博士さん。
姫馬鹿なサトーがいいです。
ツッコミ魔人なチクがいい味だしてます。
うぶい姫さんが可愛いです。
クライススキーでマイペースなフローネがぐぅです。
そして相変わらずド暗いクライスが素敵です。
文章だけどきちんと纏まってるのがいいですよねぇ。
暇博士さんちにはこの他にもソウルズメインですぺよんがありますよ。
是非行って見て下され。
ともあれ、有難うございました!


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